バラオの棘

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「それで神原くんはどういうことにむかつくの?」  話の流れに任せて、興味のわいたことを遠慮なく聞いてみる。 「そんなの、聞きたい?」  神原くんは苦笑するけど、そんなの聞きたいに決まってる。  ふだんから私のような人間にも気を使ってくれる、物腰が柔らかで優しいみんなの王子さま。そんな人の愚痴を聞く機会なんてなかなかない。下世話な好奇心だけど。  じっと見つめていると、神原くんは諦めたようにため息をついた。 「くだらないことだよ。親がうざいとか、友だちと気が合わないとか」 「えー友だちにむかつくとかあるんだね」 「なんで楽しそうなんだよ、変なの」  そう笑う神原くんの顔が蕩けてリラックスしていた。  それからたくさん質問をする私に、神原くんは終始困った顔をしていたけど、勘違いじゃなければ少し楽しそうだったし、いっぱい話をしてくれた。  その日は日が暮れるまでおしゃべりして、連絡先を交換した。  帰り道、夢みたいだったなあと思い返した。  バラオさまは思ったよりふつうの男の子だったけど、それでもやっぱり別世界の住人だった。
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