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バラオの棘
思えば、仲良くなり始めたころが、いちばん楽しかった。
「少女マンガだって、圧倒的に両想いになる前の話が多いもんねえ」
友人であるタカちゃんが、本日発売の雑誌に目線を落としたまま、わかったようなことを言う。
確かに、恋愛ものの話って片想いの方がいろんな展開があって面白い。両想いになってからの話は蛇足と叩かれることもある。それはわかる。
けれど、私が両思いに飽いて嘆いているのかといえば全く違う。ただの八方塞がりに凹んでいるだけだ。
「それ以前の話なんだよなあ」
私が苦笑いでため息をつくと、タカちゃんはちらっと視線をあげて、
「バラオさまの意外な欠点」
と興味深そうに呟いた。
視線の先には、黒板の前でたくさんの人とじゃれている神原くんの姿。
私はあの人と付き合っている、ことになっている。
神原靖雄(カンバラハルオ)、略してバラオ。あだ名をつけた人は天才だと思う。
そのあだ名にふさわしく、彼は華やかで魅力的だ。将来ホストにでもなったら、いい線いくんじゃないだろうか。
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