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「なんだよカナタ、またフラれたんだって?」  会社帰りのサラリーマンや大学生のサークルでごった返す居酒屋。  もう何本もボトルを空にして、酔いも回った頃だろう。周りの目など気にする素振りもなく、一際大きな声を上げて職場の先輩である井上は俺を箸で指した。 「え? 長崎、またフラれたの?」 「ああー……そう」  隣に座る同僚の西沢は、井上の好奇心と人の不幸を喜ぶ独特のにやけ顔とは違い、同情的な眼差しを向ける。曖昧に返しながら、まだ半分以上残っているジョッキを握り締めた。  もう何度目かも知れないが、俺は付き合いだしても長続きしない。  大抵はほとんど知らないような女の子に告白されて、そのまま付き合って、気づけばふられるのが一連の流れだ。  こちらに何か非があるのではないかと思うけれど、出来る限り彼氏としての役割を果たしてきたつもりだ。電話もメールも出来る限り返すし、デートにかかる金は全部俺持ち。付き合って一週間記念だの、一ヶ月記念だの、増え続ける記念日も見事に応えてみせた。なのに。 「何がいけねえんだろ」  高校卒業後すぐはバイトを転々としていたから収入も安定しなかったが、今は小さい会社だが社員になって運送業のドライバーだ。時間もわりとはっきりしているし、あまりデート出来ない、構えないなんてことはないはずなのに。 「元カノってタメ?」 「んーいや、一個下。今年二十歳」 「んじゃほら、目移りするお年頃ってやつじゃねーの。たしか大学生だろ」 「いや、それ全然フォローになってないんだけど」  今年二十一歳になった俺と同い年の西沢は、入社した時期が一緒だったので職場では唯一気が置けない存在だ。ふられ続きの俺とは違い、高校の頃から付き合っている彼女と既に同棲している。実に羨ましい。 「長崎って別に悪くねえのになー。変に遊んでるわけでもねーし……お前なんでフラれんの?」 「俺が聞きてえわ。西沢いいよなー、彼女おっぱいでかいじゃん。俺も次付き合うならおっぱいおっきい子がいいなー」 「お前、そういうところじゃねえ?」
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