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「美人じゃねえけど……なんか、かっこいいっつーか、憧れ……みたいな」 「添い寝頼んでくる男が憧れかよ……長崎って変なところ抜けてっかんなー。せいぜい尻の穴気をつけとけよ」  心底解せないという顔をしていたが、次の瞬間にはいつもの茶化すような雰囲気に戻っていた。 「うるせえバーカ」  軽口を叩きながらその後解散して、家に帰った。シャワーを浴びて簡単に荷物をまとめ、三十分でまた家を出る。自宅から直接犬飼の家に行ったことはないけれど、おそらく徒歩でも行ける距離だ。歩きながら携帯で近道を検索する。 (最悪、チャリで行けばいいし)  梅雨間近の湿った空気の中を足早に歩いて向かった。 「――早かったね」 「そう、すか?」  結果、裏道を通ればものの十分程度で着いた。こんなに近いとは思わなかったから驚きだ。  事前に連絡を入れておいたからか、犬飼はすぐに出た。顔の腫れはほとんど引いて、風呂に入ったのだろう石鹸のいい匂いがする。 「夕飯は?」 「あ、軽く」 「そうかい。一応寿司を取ったところだからまだお腹に余裕があったら適当に食べるといいよ」  キッチンにあるテーブルには、届いたばかりなのか袋に入ったまま手をつけてない大皿が乗っている。俺は樹液に誘い出される虫のようにフラフラと寄って行った。 「こんなの……誕生日にしか見たことない……!」 「ふふ、喜んでもらって何よりだよ。お茶でいいかい? 酒なら……ビールくらいしかないかな」 「あ、お茶で」  むしろビールなんて出されたらすぐ酒に弱いことがばれてしまう。店ならともかく宅飲みでは誤魔化せない。  犬飼はグラスに注いだお茶を二つとボトルをテーブルに置いて、向かいに腰を下ろす。 「それじゃあ乾杯。お疲れ様」
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