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なぜか物凄く辱められたような気持ちになりながら、やはり日中来た時のまま荒れ放題のリビングを通って寝室に通された。
(今日からここで、この人の添い寝を……)
薄暗くリビングの明かりに浮かび上がるベッドと、それにかかる二人の影を見ると急にやましいことをしている気持ちになる。
(いや、人助け人助け。緊張すんな、男だろ)
そう心の中で鼓舞していると、犬飼は寝室の電気のスイッチを教えると早々に踵を返した。
「……え?」
「俺はこれから仕事するからね、好きに寝てていいよ。あ、洗面所はキッチンの隣だから。今日からよろしくね。おやすみ」
「あ、……おやすみなさい」
呆然としたままなんとか答えると、目の前の引き戸が閉まった。
俺は寝間着やら歯ブラシやらが入ったバッグを床に落とし、夜伽を断られた嫁、もしくは旦那に似た気持ちを味わっていた。
(い、一緒に寝るんじゃねえのかよ!)
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