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2、
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不思議な関係性が始まって一週間後。
俺はまた西沢と夕飯を囲んでいた。今回は西沢の奢りで安いラーメン屋だ。
「で、どうなんだよ」
注文したラーメンが届くまでお互いどこかよそよそしく大人しかったが、一口目を啜ると自然と西沢の口が開いた。
聞きたいことは分かっている。むしろ俺が聞きたいくらいだ。
「うん。おかしいんだよな」
「お前の頭が?」
「いや、犬飼さん。寝ねえんだよ」
「……はあ?」
俺の言葉に西沢は首を傾げた。まさしく今の俺の心境にバッチリ当てはまるポーズだ。
「家に行くとさ、犬飼さん仕事してんだよな。で、俺が寝るじゃん。朝になってるじゃん。まだ仕事してんだよ」
「はあ? お前いる意味あんの?」
「やっぱそう思うよな」
一日だけ、俺が行き始めてから三日目に初めて朝起きたら隣で寝ていたことはあった。
けれど広いベッドの端の方で寝る俺と、反対側で寝る彼とでは接触する必要もなく、起こさないようにコソコソ出てきただけだった。
添い寝だと思っていたところが、添い寝どころか本人は寝ていない。
確かに最初から「隣で寝てくれればいい」と言っていたけれど、こういうことなのかとこちらが頭を抱えてしまう。
「長崎が寝てる間に寝て、起きてるんじゃね?」
「と思うだろ? 今日な、リビングのパソコンの前で居眠りしてたんだよ」
初日のリビングの荒れた様子はそのまま、とりあえずノートパソコンを置くコーヒーテーブルと自分が座るスペースだけを確保して、見るたびにそこにいる。カーテンレールなどが少しずつ元に戻されているから、ちょっとずつ片しているらしい。手伝おうかと思ったら断られたので、部屋についてはそれ以上何も言えない。
今日はそこに、胡座をかいてソファーにもたれかかるようにして寝ていたのだ。
西沢はしばらく怪訝な顔を俺に向け、思い出したように放置していたラーメンを食べ始める。
「ん、まあ……良かったんじゃね? 尻の心配しなくて良さそうじゃん」
「そう、なんだけどさあ」
「ん?」
俺はここ数日、悩んでいることがある。
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