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数日後の休日。別れたばかりの元カノ、美恵が俺の部屋に残していった物を渡すために近くの喫茶店で会った。
「なんか、カナタ君、元気そうだね」
「ああ、うん。これで全部だと思う」
白々しい会話。
昨夜遅くに集めた彼女の荷物は大きな紙袋三つになっていた。徐々に増えていったのだろう。付き合っていた時は気にならなかったけれど、集め終わってからふと自分の部屋を見て物のなさに驚いた。
「私といる時、カナタ君、ずっと無理してたよね」
荷物を受け取った彼女がふいに呟いた言葉に俺は内心、ああまたかと思う。
いつもそう言われてきた。
無理をしている自覚はないけれど、やっぱり自分は男で、彼女は女で、それなら多少は無理をしてでも彼女に尽くすのが男だろうと思っている。
こんな見た目だからか高校くらいから女の子に不自由したことはない。しかし大抵はいわゆる草食系男子を求めて近づいてくることが多くて、けれど実際俺は普通に男だ。年頃の男らしくセックスは好きだし女の子も好きだ。パンチラには目がいくし、おっぱいは大きければ大きいほど夢が膨らむ。ついでに下半身も膨らむ。
(男っぽくない人だと思ったのにってフったくせになんだよ)
男っぽくないと同性に舐められる。男っぽくすると異性に振られる。皆みてくれだけで判断して、中身を見ることもしない。見たら幻滅する。
「……俺、約束あるから」
そう言って、息苦しい場所から逃げるように席を立った。
会計を済ませ、早足で外に出るとその途端、タイミング悪く人にぶつかる。
「うわっ」
完全に前が見えなくなるくらいの長身と、薄手のジャケットに染み付いた煙草のにおい。勢いづいていた反動でよろける俺を、大きな手が捕らえた。
「すみませ……おや」
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