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先輩は。
果たして、観神楽坂先輩は悪かったのだろうか。
おそらくは、この人の意識では悪気すらも無かっただろう。それは、観神楽坂先輩が悪意を罪悪感も無しに奮ったという意味ではなく、彼女はただ『学生』をやっていたという意味だ。
この人は、ただ学校に来て勉強をしていた。そういう人だ。
彼女は、ただそこに居た。狂ったのは、周りだ。
周りが勝手に狂って、壊れていった。彼女の家庭もそうだ。
これは、僕が観神楽坂先輩から直接聞いた話なんだけど。
観神楽坂先輩には、年の離れた兄が1人いた。とは云え、実の兄というわけじゃない。
親戚のお兄ちゃんだ。そんな、お兄ちゃん。
大学に通う為に、親戚である観神楽坂家にお世話になっていたそうだ。長身で人当たりの良い人格者だったらしく、観神楽坂家との関係は、ご近所付き合いと共に極めて良好だった。
彼が狂うまでは。彼女に狂ってしまうまでは。
結果、彼女は彼を半殺しのレベルに叩きのめし、その後、彼は彼女のお父さんに更に半殺しにされたそうです。半殺しの、更に半殺し。
観神楽坂先輩が、お兄ちゃんを半殺しにするのまでは正当防衛。
お父さんがお兄ちゃんを半殺しにしたのは、明らかに過剰ってのが、この国の法律だった。結果として、観神楽坂家は崩壊した。
観神楽坂先輩のお父さんは、刑務所へ。服役中に自衛隊を除隊。
観神楽坂先輩のお兄ちゃんは、退院後、観神楽坂先輩のお母さんと一緒に行方不明に。大学も退学となった。
一家崩壊だ。一つの家庭は、そうやってバラバラになって、家庭として機能…………成立しなくなってしまった。
不成立になった家庭の残骸に、つまりは、元の家に彼女は今も暮らしている。暖かい記憶も、辛い出来事もそこにある。
自分の心的外傷の様な家で、親戚からの支援を受けながら、祖母と祖父と一緒になって暮らしている。
話せば更に長くなってしまうんだけど、僕と観神楽坂先輩が出会った頃は、彼女のストレスはそれはそれは酷いものであったよ。
観神楽坂先輩が、ちょうど族潰しを始めた時期だ。観神楽坂先輩にとって、ストレス発散なんだよね。
憂さ晴らしに族を壊滅させている。その、化物じみた戦闘力を以て。
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