第0話/蕪無 薫「始まりで躍れ」

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「お前、どうするつもりなんだ」  先生が云う。担任の故宿(こやど)先生が、どうしようもない奴に向ける目を僕に向けていた。  生徒に向けていい様な目じゃねえ。おお、ちょっとした殺意まで滲み出てませんかねえ。  いや、分かるよ。分かります。  ちょっとふざけすぎでしたね。僕が悪かった。  だから、その目力の出力を絞ってもらえませんかね。泣きそうです。  こえーよ。殺し屋みたいな目ぇしやがって。 「お前さ、マジ……」  おっとー? その言葉に出来ない感じは、言葉にしてしまうと色々と問題になるからでしょうか?  教師というのは大変ですね。  場所は夕暮れ時の教室。  美人教師と二人っきりというのは、かなりそそるものがあると思うのです。先生が殺意の波動に目覚めたみたいな目をしていなければ。  「はぁ」と、故宿先生がいつものきつめの表情から、疲れたみたいな表情に変わります。よくされる顔だ。  色んな人が僕にその顔を向けてくる。 「なあ、蕪無」  僕を呼ぶ先生が、煙草を吸いたそうにしていた。あんまり生徒の前では吸いたくないのかな。 「蕪無(カブラナ) (カオル)」  故宿先生が僕の名前を呼んだ。僕が、13年間付き合ってきた名前で、これから先も付き合っていくであろう僕の名前。  100年くらい。
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