17人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんでしょうか、故宿 諭狩先生」
フルネームで呼んでみたら睨まれた。ちゃんと『先生』って付けたのに。
中学生英語で云ってやればよかったのかしら。…………余計にぶん殴られそうだ。
女性の扱いは、中学生男子には難しい。女の子を追いかけ回すくらいなら、僕は蝶々でも追い掛けていた方が気が楽だね。
…………まぁ、今回のお説教は、僕が体育の授業中にフェードアウトしたのが原因なんだけどね。校外マラソンの途中で、蝶々を追い掛けたのがまずかった。
先生に呼び出されて、「ちょーちょが! だってちょーちょが!」って必死に訴えてみたものの、勢いで押し切れなかったよ。僕にとっては、走ってるより蝶々を追い掛けていた方が有意義だったんだけどな。
だって、目の前を蝶々がひらひら~っと横切ったんだよ?
……追い掛けるじゃん?
蝶々だよ!?
追い掛けるっしょ。そこは。
だから、ある意味、僕がマラソン中に行方不明になったのは、不可抗力なんじゃないかなって。仕方ないよね。
不可抗力なら。回避不可能なところがあるし。
ただ、それがこの目の前の体育教師には許せなかったらしい。まぁ…………そりゃそうだよな。
冷静に、客観的に物事を考えてみよう。悪いのはどっちだ?
そう、考えるまでもないよね。悪いのはこの世界だ 。
「…………」
ああ! 心なしか、僕を睨み付ける先生の威圧感が増大した!?
おかしいな。僕が考えてる事でも分かったのかな。
だとしたら、やばい。なんかもう、目が。
親の仇でも見てるみたいなやつだよ。
不倶戴天の瞳。
最初のコメントを投稿しよう!