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先生は、僕に大人になれって云う。いつまでも、子供気分じゃ困るって。
出来ないよ。大人の振る舞い方だって分からないのに。
僕は子供なんだから、子供にしかなれないよ。
望んでなくたって、時間だけは過ぎていく。お腹はすくし、眠くもなる。
身体だって大きくなる。大人になっていく。
ならなきゃいけない大人へと。人生って強制スクロールなところがあるよね。
「……先生は大人なんですか」
ついつい、反抗的な目で云っちゃった。でも、先生はあんまり怒ってる感じがしないな。
「私はね、大人ってのは、大人の振る舞い方を身に付けた子供の事だと思ってる」
持論かな。故宿先生の。
つい、漏れ出ちゃった感じの本音。生徒には、あんまり聞かせたくはなかったのかもね。
だって、先生は人間の本質を子供だと思ってるんでしょ?
身に付けたもので、人は大人になるんだって。でも、根っこのところじゃ、皆、子供。
大人になることってファッションなの?
ジャラジャラ身に付けたアクセサリーが大人にしてくれるわけ?
ケダモノよりかはマシってか。笑える。
滑稽だなー。世界も社会も人生さえも。
笑えてくる。
ああ、もう。滅茶苦茶だ。
滅茶苦茶だよ。
感情も。表情も。
「今日はもう帰れ。そんな顔をした奴に、何を云っても無駄だ」
決めつけんなよ。無駄とか。
価値を。
「むかつく」
先生が笑った。酷く自虐的……自嘲的な笑みだったせいだろう。
先生の笑顔を見た瞬間に衝動が萎縮したのは。
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