第0話/蕪無 薫「始まりで躍れ」

6/20
前へ
/206ページ
次へ
              ●  外に出た。日差しが嫌味なくらいに激しくて、太陽をぶっ殺してやりたくなった。  けど、それは無理だね。うん。 「………………」  あれから先生は、僕に「帰れ」としか云わなくなった。  あ、でも反省文は書かなきゃいけなくなった。  お父さんにも怒られる。やだなぁ。  痛いんだよね、拳骨って。泣いちゃう。  小学生の頃に動物園で迷子になったけど、あの時も僕が「ごめんなさい」を云うより早く拳骨だった。  …………野蛮人め!  すぐに手を出しやがって。あんなの教育じゃねえよ。  ただ単に気持ちを伝える術が未熟なだけじゃねえか。  畜生!!  僕が殴られたのが自業自得なら、あんたの拳が痛いのも自業自得じゃねえか。ばーか、ばーか。 「………………」  ふぅ。溜め息がでちゃうよね。  なんか。なんか、溜め息が。  あんな乱暴者なお父さんだけど、孫でも抱けば丸くなるんだって。ばあちゃんが云ってた。  お父さんのお母さんが云ってた。だから、たぶんそれは間違いない。  問題は、孫が出来るのかってところだけど。結婚とかもしなきゃって話でしょ?  この僕が。  無理くね?  結婚とか。付き合うとか。  大人になったら、結婚とかするんでしょ。……いや、なんかもう、わけわかんねえ。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加