第0話/蕪無 薫「始まりで躍れ」

7/20
前へ
/206ページ
次へ
 夕方だってのに、手加減も手心もない、容赦なしの太陽光線を浴びながら、僕は歩く。歩いていく。  そして、考えてみる。  人生とか、大人について。  やったらいけない事が分かるのが大人だ。大人は、やったらいけない事はやらない。  今日の先生のお説教は、そんな内容だったと思う。  でもさ、けどさ。  この間、痴漢で捕まったのは、どこかの会社員だった。この間、不倫がバレたのは大物女優だった。  この間、公務員が賭博で。この間、母親が赤ん坊を。  政治家が。スポーツ選手が。  …………善悪の区別が付かなかったのかな。大人なんじゃなかったのかな。  結婚してる人も子供の親だった人も。子供だったのか、ただの悪人なのか。  もう、分からない。大人とか、子供とか。  犯罪件数で云ったら、子供より大人の方が多いんじゃん。  どうなってんだ、この世界は。  もうやだ。世界が怖い。  大人怖い。  将来の夢とか目標だとか。そんなキラキラしたもんを持ったまま死んだら未練が残っちゃうだろ。  やだ、もう、や。や、ですよ。  大人になりたくない。社会に出たくない。  死ぬのも嫌だ。でも、このまま生きていたくもない。  ……あ? 詰んだ。  僕の人生詰んだよ?  うわー……うわうわうーわー…………やっべーなーぁ。 「どうしよっか」
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加