第0話/蕪無 薫「始まりで躍れ」

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 絶望しかない。この世界には。  未来にも。そして、何よりも自分自身に。  でーもーなー、死ぬのはやだなー。生きる理由は見出だせないけど、死にたくもないしなー。  あー、もー。どーしよー。  ……ま、僕が死ななくたって、世界のどこかで誰かが死ぬ。事故かも知れないし、殺されるのかも知れないし、自殺かも知れない。  僕が住んでるこの国だって、孤独死を迎える老人がいれば、子が親を殺す。まともなのかな。  この国は。こんな国でも。  最悪ではないのかも。けど、最悪じゃないってだけで、悪くはある。  人が死ぬのは、どうにもならない。人が殺されるのも?  全ての犯罪を防ぐのは不可能だ。でも、誰かが死ぬのを、仕方がない事なんだって割り切りたくはない。  それはもう、全ての人間に好かれるのを放棄する事に匹敵するよ。僕の中では。  こうして1人で一喜一憂するくらいしか出来ないけど。人はそれを無力って云うのかな。  こういうところが子供なんだろうな。  こういうところなんだろうな。  大人になったら現状を変えられるとは思えないけど。人間って無力だなぁ。  集まると際限なしに残酷だけど。きっと、世の中、善人より悪人の方が多いし。 「ああ、もう」  転んじゃったよ。注意力散漫ってやつだよね。
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