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■沙織さんちのお姉さん
ここは、室山県立敷島女子高等学校、学生食堂。つまり、お昼休みなのです。もう、あらかたお弁当を平らげてしまった子とかが来るのですが、わたしたち香枚井登下校組の女子4名は、特にそういった早弁とかもせず……案外真面目なほうなんですよ、こう見えて。
「久しぶりに、学食でも行くか、沙織!」
「え、ええ、はっとりたちに付き合うよ」
「沙織、いったい何に怯えてるんだ?」
「えっと、ちょっとね……学食って、いろいろと、ね……」
「意味が解らない」
「わたしはー、カツカレーと、A定食と、プリンと、メロンパン!」
「梨音ちゃん、相変わらずたくましい胃袋だね!」
「えっへん!」
「威張るな! それにしても、そんなに食べて、スタイルキープしてるってのが、ある意味奇跡だなー」
「だいじょうぶ。家に帰ってから毎日腹筋五〇〇回やってるから!」
「わたしが言うのもなんだけど、梨音ちゃんって、不思議な生き物だねえー」
「同じく!」
「わたしはもう慣れた」
「おいおい、みんなー」
すると、廊下の向こう側から、昼間っから女同士ラブラブしている、妖しげな上級生集団がやって来た。高槻紫織は長身のスレンダーボディーで、長めのスカート。両腕に、誰だか分からない女子生徒を何名かぶら下げて歩いてきた。何だか、紫色の煙が立ち込めていそう。
「はあーい、マイ、スイート・シスター沙織!」
「ゲッ! 紫織!」
「ああ、あのお姉さんね」
「あの先輩、相変わらずだねえ」
「沙織とそこの地味なみんなー、学食なんて珍しいね! どう? お姉さま方と一緒にお食事でも如何かしら」
「は、はあ……光栄です」
「ちょっと、沙織、どこ行くんだ、沙織!」
「だ、だってえ!」
「それにしても、先輩と沙織ちゃんは全然雰囲気違うねー」
「これでも姉妹?」
「もう、うるさいなあ……分かりました、付き合いますとも! 付き合えばいいんでしょ?」
「さすがはマイ・シスター、話が早い、さあさ、お姉さまと一緒においで!」
「やだってば! 腕引っ張んないで!」
「ちょっと、そこの地味な1年! あの紫織さまと、近くでご同席出来るのよ! 光栄に思いなさい!」
紫織の「親衛隊」たちが言い放った。ごく平凡な1年生4名は、その「親衛隊」の迫力に気圧されそうだった。
「そ、そうですね! ありがとうございます……」
(はっとりの所為だかんね! 学食連れて来たの!)
(ああ、悪い悪い、あの人の存在、すっかり忘れてた)
(わたしは、もう、メロンパン1個でいいです)
(梨音ちゃん、しっかり!)
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