2話 とにかく何とかする女子中学生たち

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■服部美月のぷんすか状態  わたし、服部美月。14歳。和菓子屋の娘。いま、イラッと来ていることがある。それが、進学のことだ。親が、敷女へ行け、敷女へ行けってうるせえんだ。母親が敷女卒で、あそこにしなさいよ、って言うけど、わたしは女に生まれたくて生まれたんじゃないんだからね。親に頼んだ覚えもねえよ。あーあ、いっそのこと、兄貴の弟に生まれて来ればよかった。でも、こればっかりはしょうがない……。 運命を悔いるよ。あー、やだやだ。女やってるってだけで、めんどくせえ。いろいろあるしさ。負けず嫌いなところがあって、傍目には喧嘩売ってるように聞こえるらしい。クラスで孤立したこともある。でも、誰にも負けたくないじゃんか。負けたら悔しいじゃんか。だから、親に言われなくても、勉強はするし、スポーツもする。負けたら、なめられるから。 でもまあ、今は、アホ2名がいるし……梨音と桃花のことね。何だか憎めないんだ、あいつら。何かと面倒だけど、ほっとけないんだよね。梨音は、電気屋の跡取り。「将来どうすんだ」って訊いても「先のことなんか、分かるわけないだろ」とか言うし。桃花は、東京生まれの江戸っ子で、普段おとなしいんだけど、たまに、わたしに意見してくるからね。こんな筋の通った奴は初めてだ。 春名坂中学校の同じクラス。梨音も桃花も、「敷女目指そう?」って言うけれど、オープンスクールどうすっかなあ……。男子いねえじゃん、って感じなんだけど、まあ、行くだけ行ってみるか……。どんな女共の集団か、この目で見極めてみせる。何が県下一の進学校だ。わたしを誰だと思って? こんなもん、楽勝じゃねえかよ。      ◇ ◇ ◇ 春名坂中学校の三年一組。進路希望表には、第一志望に「県立敷島女子・普通科」と書いておいた。気になるので、桃花と梨音を呼んだ。 「ねえねえ、美月ぃ、わたしと同じだね、第一志望」 「ああ、まあな……で、梨音は何て書いたんだ?」 「同じ学校の、情報処理科と、同じ学校の、家政科」 「アホか! 県立高校は、一個しか選べないの! やり直し!」 「えー、じゃあ、敷女の情報処理科にするよー。あとは滑り止めだね」 「ふーん、なるほどね。でも、情報処理科は定員少ないからな」 「む、難しいってこと?」 「いいや、仮に合格出来たとしても、定員オーバーで、普通科に回される」 「そんなもんですかね、美月さん」 「よし、オープンスクールとやらに出てやろうじゃないの!」 「おおー、気合い入ってるねえ……」 かくして、わたしたち三名は、敷女で決まった。夏休みのオープンスクールや、学校説明会などを見学する予定だ。 「さあ、わたしが夏期講習から持って来たテキストで、勉強だ勉強!」  「えー、遊びに行こうよー」 「そうだそうだ」 「たわけぃ! 市営春名坂プールは、これが終わってから!」 「この分量だと、一週間はかかるぞ、美月……」 「えー、遊びたいー」 「黙れ、黙れ! 一緒に敷女に受かるんだろ? 気合いが足りんちっとろうが!」 「はいはい、付き合いますとも、美月さん……」 「梨音ちゃん、がんばろうね!」 こうして、わたしと、アホ二名の夏休みは始まった……。     
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