2話 とにかく何とかする女子中学生たち

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■立花梨音のつぶやき  わたしは、立花梨音。14歳。みんなね、わたしのこと、「梨音は悩みがなくていいね」って言う。確かに、明るく振る舞ったり、笑いを取りに行ったりする。そんなわたしを見て「梨音は無邪気だね」って言う。そんなことないよ。確かに、見た感じ、少女というよりは、少年に近いし、声だってハスキーだし、神様が性別間違えたとしか思えない。だったら、女という立場を利用して、精一杯お洒落したり、きれいなもの、可愛いものを追い求めるよ。特権だもの。 美月って友達がいるんだ。しょっちゅう、わたしのこと、どつくけど、仲いいんだ。男気にあふれているところが、唯一の共通項かな。あの子にはかなわない。勉強、スポーツ、学級委員長。才能がある奴っていいよなー。ちょっとはわたしにも分けて欲しいよ、才能をねー。 桃花って、転校生の友達がいる。普段はおとなしいんだけど、怒ると滅茶苦茶怖い。時に、とてもおっかない。東京生まれだからかな。どこか、洗練されたところがある。わたしにはない、スマートさがある。ファッションセンスを追い求めてるのが、唯一の共通項かな。あの子にもかなわない。もちろん、おくびにも出さないけどね。 うちは、電器屋だから、生まれた時から電器屋の親父の背中を見て育ってる。商売繁盛が我が家のモットーだから。親父は一匹狼だから、自営業だから、親父がつぶれると、何もかもがだめになる。なので、将来は漠然と、親父を助けることのできる人間になりたい、ぐらいしか考えていない。毎晩遅くまで電気工事をしている親父を助けたい。 逆ハーレムな、工業高校も考えたんだけど、たまたま桃花から、敷女のオープンスクールのパンフレットを分けてもらって、わあ、このお姉さん格好いい! 制服が可愛い! って単純な理由で、わたしは桃花についていくことに決めたよ。情報処理科もあるんなら、わたしの得意分野じゃんか。……でも、美月が言っていた。「情報処理科は定員が少ないから、普通科に回されることが多い」って。そんなもんですかねえ……。 桃花が、オープンスクール行こう、って言い始めた。美月も、どうやら、その気になって来たらしい。こいつはうかうかしてらんないぞ! 電話だ、電話! 美月に電話! 「もしもし、立花ですが……」 『梨音か? ちょうどいい、いま、わたしん家で受験勉強中だ、来るなら来てみ?』 「あっ、ずるーい! わたしも混ざるー!」 『なんだ、勉強する気になったのか。じゃあ、中学校の教科書とノート、五教科持ってわたしん家に来なよ。急げよー!』 「はいはい、わかりました美月さん……じゃねー」 バス停で、室山三四系統を待つわたし。正直、難関校目指して勉強するなんて、想像もしてなかったもんなー。漠然と、店を継ぐ、ぐらいで……。
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