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目が細かく動いている。
本多の手。
鍋。
薬瓶。
藁。
炎。
それらひとつひとつを注視する。
だが、怪しいところは発見できない。
ややあって―
柳原の目の前に絹糸が絡んでいる棒が突き出される。
本多「ご確認ください」
柳原、言葉がない。
やむなく、絹をとってしげしげと見る。
ホンダ「間違いなく絹でしょう」
柳原、不承不承うなずく。
長谷川「(勝ち誇ったように)ほら、 本物でしょう」
柳原、酢を飲んだような顔で黙っている。
〇 剣道場
柳原と渡辺が対峙している 。
主将「はじめっ」
激しい打ち合いが始まる。
渡辺はビシビシと容赦なく柳原を打ち据える。
主将「 やめいっ」
打ち合っていた剣士たち、手を止めて面を外す。
渡辺と柳原も表面上は普通に試合を終えたような顔をしている。
〇 同・外
渡辺と柳原が連れ立って歩いている。
渡辺「それでインチキは見破れなかったというわけか」
柳原「申し訳ありません。しかし」
渡辺「しかし、何だというのか」
柳原「あれは、あのインチキを見破るのは科学知識とはまた別のものだと思います」
渡辺「何だというのか」
柳原「科学者は必ずしも手品のタネに精通しているわけではありません。手品に関しては科学者といえどもただの素人です」
渡辺「手品、か」
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