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石井が横手から現れる。
石井「困っているようだな」
柳原「申し訳ありません」
渡辺「私の不徳の致すところであります」
石井「早く言えばイカサマ、目くらましについて詳しい者がいれば良いのだな」
渡辺「それがよろしいかと」
石井「心当たりがある」
渡辺「どのような」
〇 神社・境内(夜)
露店が並んでいる。
威勢のいい啖呵売の声が響いている中、私服の柳原、渡辺、石井が連れだってやってくる。
なんでこんなところに、という当惑の色が柳原の顔に浮かんでいる。
見世物小屋の前で、石井が立ち止まる。
呼び込みの口上が響く。
口上を述べているのは、(冒頭に一種の巫女として出てきた)長尾郁子。
小屋の外壁の一部が切り取られたようになっていて、中の喧騒が見えるが、肝腎の出し物はちらちらとしか見えない。
いぶかしげな柳原、渡辺。
と、そこに別の軍人ふたり(山川信吾中佐・一条実孝侯爵=少佐)がやってくる。
山川に敬礼する石井。
柳原と渡辺もそれに倣う。
石井「恐れ入ります」
山川「では、入るか」
と、自分から小屋の中に入っていく。
開いていて中の様子が少し見える。
観客でごった返しているのがわかるが、肝腎の出し物はちらちらとしか見えない。
当惑気味の柳原。
渡辺「おい」
柳原「は」
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