1人が本棚に入れています
本棚に追加
柳原「(息を整えて)失礼ですが、今の見世物がイカサマを見破るのに何の関係があると言われるのですか」
山川「まあ待て。出し物はあれだけではない」
また入場料を払って中に入る。
柳原「また入るのですか」
渡辺「こら」
しぶしぶ後に続く。
〇 中
今度は半裸の千鶴子が火のついた百目蝋燭を持ってあらわになった肌に融けた蝋を垂らしている。
そしてやおら炎を眼前に持ってくると、何を口に含んでいたのか火炎を口から噴射する。
仰天する客たち。
また追い出されてしまう柳原たち。
〇 外
またすぐ入場料を払って再入場する一同。
〇 中
今度は「千里眼」と大書された前に、着替えた千鶴子と郁子が出演している。
郁子「はい、どなたかお相手していただけるお客様はいらっしゃいませんか」
渡辺、柳原の脇を肘でつつく。
やむなく、手を挙げる柳原。
郁子「はい、そこの軍人さん」
柳原、やむなく舞台に上がるる
郁子「(にこにこしながら小声で)冷やかしはごめんに願いますよ」
柳原「冷やかしではない」
郁子「疑っていらっしゃる。わかるんだ」
柳原「あんたが占うのかね」
郁子「あたしじゃあない。この子(千鶴子)が千里眼を使うんだ」
それからね。占いじゃあない。千里眼さ。見通せるんだ。これから起こることも隠されてるものもね」
柳原「手品なんだろう、千里眼というのは」
最初のコメントを投稿しよう!