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それを村長(長谷川)に差し出す。
本多「改めてください」
、吹いて冷ましてからほぐしてしげしげと見る。
「(顔中に驚きの色が広がる)絹だ。絹だぞ」
どよめきが広がる。
〇 軍需局研究室
びっしり壁に化学・工学に関する専門書が並んでいて、その間に辛うじて机と椅子が置いてある。
渡辺が机についている
ノックの音がして、柳原が入ってきて敬礼する。
柳原「柳原、参りました」
渡辺「 ご苦労。座りたまえ」
軍人ではあるのだが、 それほど堅苦しい所作ではない。
渡辺「 実はだな、一つ調べてほしいことがあるのだ」
柳原「何でしょう」
渡辺「君は藁を絹糸に変えることができると思うかね」
柳原「は?(当惑する)藁を、絹糸に、ですか?」
渡辺「どうかね」
柳原「ご質問の意味がわかりかねますが」
渡辺「まあそうだろうな。実はだな、藁を絹糸に変える技術というのを開発したと主張する男がその技術を軍に売り込みに来たのだよ」
柳原「(言下に)ありえませんな」
渡辺「そう思うかね」
柳原「思う、ではありません。科学の法則に反することです。 藁は植物性、絹は動物性、全く別物です」
渡辺「だが牛は草を食って肉になるぞ」
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