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柳原「しかしそれには極めて複雑な工程が牛の体内で行われた結果であり、現在の人類の技術では到底再現不可能なものです」
渡辺「それができる、と言っているのだな」
柳原「誰が、ですか」
渡辺「この男だ」
と、写真を添えた資料を机の上に出す。
本多の写真だ。
柳原「どんな男ですか」
渡辺「名を本多維富(これとみ)という。自称発明家だ。どんな経歴なのかはっきりしないただ山形県庄内の農村を手始めに藁から絹糸を作って見せて、安い藁を高価な絹に変えることができればこれは村の経済に大いに貢献するものではないかと売り込んできた」
柳原「そんなことが実際にできたとでも言うのですか」
渡辺「少なくとも村人を集めた前での実験では成功したそうだ」
柳原「信じられませんな」
渡辺「まあそうだろう。しかしこのように新聞記事にもなり―」
と、 資料をめくってスクラップされた新聞記事を見せる。
柳原「(読み上げる)日本国建国以来の大発明」
と書かれている見出し。
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