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新山下にある築三年の新しい大型マンションだが、正直隣に誰が住んでいるかもよく判らない。左右と下の階の部屋には挨拶に行ったが、ろくに顔も見てない、家族構成すら知らない。 大規模マンションなのに意外と人に会わないものだと思った、もっとも莉子は殆どを家の中で過ごしているので、会わないのも当然なのだが。 それからも黙々と仕事をし、とりあえずアイドルグループ向けの一曲は完成させた。メールでデータを送り、更にUSBメモリに保存してそれを事務所に送るのが手順だ。 メモリを外して電源を落とす。 明け方近くになってベッドに潜り込むのはいつもの事。夜中は静かだし電話も来客もないから仕事に集中できるので一年の殆どは昼夜逆転と言っていい生活だ。 ベッドに寝転ぶと、思わず天井を見つめてしまった。 そのコンクリートの向こう側に、あの男性がいると思うと、なんだかソワソワし始める。 (素敵な人……だったな……) 最初の印象こそ意味もなく怒っていて怖かったが。その後の溶けたような笑みを見せられて、莉子の心まで溶かされた。 小さな鼻歌が漏れた、気分がいいと音楽が溢れ出してくるときはある。 口をついたメロディーを慌ててスマートフォンの録音機能に残す、これでパソコンなど立ち上げて音符にする作業を始めたら、また眠れなくなってしまう、録音機能は手軽でいい。 気の所為か温かくなった心を抱き締める様にして、莉子は眠りについた。 ***     
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