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「それに昨日は醜態をお見せしまして……俺も仕事帰りで疲れていたのに、同居してる弟に締め出されたと思って怒りが」
恥ずかしそうに言う姿に、莉子は思わず微笑んだ。
「弟さんとお住まいなんですか?」
「ええ、こちらの大学に合格したので、在学中は面倒を見る事に。もう、絶対俺のところに来るのが目的でこっちの大学を受験したんですよね」
と言う事は春からだろうか、同居は数カ月と言うところか。
「仲良しなんですね」
うちとは違うな、と莉子は思いながら聞いていた。
「年が離れてますからね、弟にしたら兄と言うより叔父みたいな感覚な気がしますけど。夏休みに入ってから、すっかりハメを外しまくっているので、つい怒りが増しまして」
ちょうど十歳違いの兄弟だった、それすら莉子とは違う。
「あ、済みません、これをお詫びに」
両手で持っていた箱を持ち上げた。
「いえ、本当に大丈夫ですから」
「いえ、これはあなたの為に作ったので」
言われて莉子の心臓は跳ね上がる。
「え……? 私の為に……?」
「昨日、ひと目見て思いました。あなた、ちゃんとご飯、食べてます?」
「え?」
「食べてないでしょ? 駄目ですよ、人は食べ物から栄養を摂って生きてるんですから。しかもただお腹に流し込めばいいんじゃないんです、ちゃんといいものを最適な量で食べないと。それが食育です」
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