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言われて途端に莉子の眉間に皴が寄る。 「……なんか嫌いな言葉です、食育って」 食べる事まで教育になるのか、と言う反発である。 藤堂は小さな溜息を吐いた。 「食べる事と教育がイコールだと思っているんでしょう? 違いますよ。判りやすく言えば、美味しく食べられる植物と毒のある植物の見分け方を学ぶと思えばいいんです。致死性の高い植物を食べて確かめていたら身が持たないでしょう? それを教えてくれるのが食育です」 「──はあ」 どうせ買い物はいつもスーパーか通販だけど、とは思ったが敢えて言わなかった。 「とにかく、これ。召し上がってください」 「あの、でも……」 「安心して下さい。俺は元町でフレンチレストランを経営してるシェフです。余り物のまかない程度のものですけど」 「わあ……シェフの方の手作り弁当ですか……」 「ええ。少しは興味持ってくれました?」 藤堂は、食べる事にと言う意味で聞いたのだが。 莉子は違う事──藤堂自身の事を聞かれたと思って、顔に朱が上る。 「はい、あの、ありがとうございます」 莉子は真っ赤な顔のまま、その小さな箱を受け取った。 「箱は使い捨てなので捨ててくれて構いません。それでは失礼しました」 頭を下げて帰っていく。     
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