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環境が変わっても、莉子は香子の影のような存在で、『香子の妹』としてしか扱われない。
(居なくなりたい)
いつしかそこまで追い詰められ、中学二年の半ばから不登校になった。
それでも、両親と担任に支えられ、保健室登校ながら週の半分ほどは学校へ行き、なんとか高校も卒業できた。
だが。
香子は高校で軽音部に入っていた。
元々二人揃ってピアノは幼少期から習っていた。その腕前と美声から、数人の部員でバンドを組み学校の外でも演奏するようになっていた。
コピーもしたが、オリジナル曲も作った。
その曲作りで、ある日香子から無茶振りされる。
「これに歌詞付けて!」
楽譜を渡された。
「え、歌詞? 無理だよ……」
そんな経験はなかった。
「私これから練習あんのよ。来週にはその曲も練習したいから、よろしくね!」
完全に押し付けられた、自分も忙しいなどと言う言い訳はできなかった。
音符は読める、バラード調のその曲に、四苦八苦しながらも言葉を連ねた。
三日かけて作ると姉は大したお礼もなくそれを受け取り、自分の楽曲として発表する。
よりによって、それが好評だった。
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