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いい歌詞だ、泣ける歌詞だった、心に響いた──それに気を良くした香子は、莉子が作ったとは言わずに、次々と莉子に曲作りを依頼した。莉子は嫌だと思いながらも、それを引き受けてしまう。
大学生になってまもなく、香子は才能を見出され、プロの歌手としてデビューする。
Cacco with bangと言うバンド名で、高校時代からの仲間二人と芸能界入りすると、その声とルックスの良さで人気に火が点き、あっという間にスターダムへ駆け上がる。
香子の忙しさは、そのまま莉子の忙しさに繋がる。
文句を言う間もなく曲作りをし続けた。初めのうちこそ莉子はタダ働きだったが、一年近く経った頃、香子からKKと名乗れと提案される。それによって印税や依頼料は莉子に入る事になったが、それは莉子が香子のゴーストライターであり続ける契約でもあった。
KKは香子のライターとしての呼称だと周囲に吹聴している。
莉子は表に出たくない、目立つことは苦手だった、だからそれでよかった。香子が前に出る事で金が稼げるのなら構わなかった。
だから文句はない、筈だった。
しかし、最近の香子のやり方は目に余る。楽曲作りを全て任せられるのは構わないが、自分のバンドだけでなく、プロデュース業まで始めたのだ。
一番最初は後輩バンドに自分達がかつて歌った曲をプレゼントしただけだった。
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