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ついさっき電話で話をしたのに?とは思ったが、朝も昼も関係なく、連絡もなくやってくるのは香子くらいだ、呼び鈴もなくドアを開けるのも。 あと鍵を持っているのは実家の両親だけである。 (集中したい時は、一人にしてほしいなあ……) その為に、二人で住んでいたマンションから出て、新しいマンションを買ったのに。 溜息を吐くと、激しい音が空気を揺らした。 「な……!?」 ドアを叩いているようだ、いやこの激しさから言ったら殴るか、蹴っているのだろうか。 香子だと思っている莉子は、慌てて玄関へ向かった。 「香子! どうしたの!?」 激しく連打する音に、声が届いているとは思えなかった。 莉子はサンダルに足を通して、鍵を開けた、その音にようやく叩く音が止む。ほっとしたのも束の間、ドアは乱暴に外から開いた。 「きゃ……!」 もっともドアチェーンがかかっているので、ガンっと激しい音がしてドアは十センチ程開いたところで止まった。 思わずドアから一歩引き、身構える。 ドアの隙間から覗き込んだのは、長身で細身の男だった、莉子は見覚えのない男である。 興奮しているのか元々切れ長の目が更に吊り上がり怒っているようだ。前髪がさらりと流れた顔立ちは一瞬見惚れるほどの美丈夫だったが、むっと眉間に皴が寄ったのを見て、莉子は再び身構える。 男は舌打ちした。     
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