早起きは三文の徳かもしれない

2/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
小学生と違うところって、何だと思う?中学一年生になったばかりの頃は、何もかもが新鮮で毎日目の前がチカチカしているようだった。地元の公立中学校に入学した私は、複数の小学校が集まった、見慣れない生徒たちの中でそわそわしたものだった。 畑中歩(はたなかあゆみ)、大して珍しくもない名前はクラスメートにすぐに覚えてもらえた。同じ小学校の子が数人いたけれど、ほとんどが別の小学校の子たちだったから、最初の間は気後れしてた。 だんだん慣れてきたころ、みんなの話題はどの部活に入部するかだった。もちろん帰宅部という手もあるけれど、ちょっとつまらないじゃない?小学校の頃にはなかった部活動に憧れていた私は、文化部に狙いを定めていた。 美術部、料理部、読書部、運動の苦手な私は、テニス部やバスケット部を憧れのまなざしで眺めていた。 「歩ちゃんは、どの部に入るの?」 声をかけてきたのは、元同じ小学校だった滝美奈子(たきみなこ)だった。私と同じように運動を苦手としている。 「私は運動は苦手だから、美術部を考えてるよ」 私の言葉に美奈子はええ~っと声をあげて、もったいないと笑う。 「笑うことないじゃない。運動神経良くないもん」 「私だってそうだよ。だけどさ、卓球部って楽しそうじゃない?」 「卓球部?」 テーブルテニスと呼ばれ、台の上でピンポン玉を打ち合う競技だ。TVで観たことはあっても、実際にやったことはない。 「一体どうしたの?」 「せっかくだからさ、運動部に挑戦してみない?」 体験入部だけでも付き合ってほしいと頼まれて、卓球部の見学に行き、そのまま入部することになってしまった。自分でも不思議だけれど、断る理由が一切見つからずやってみても良いかなって思ったんだよね。ほとんど美奈子のごり押しだけれど。 男子と女子で部室が分かれていて、先輩が部室内に台を広げて打ち合っている。私たち一年生といえば、台で打ち合うことは許されず、広間で壁打ちと素振りを顧問の先生から言い渡される。張り切っていた他の入部者は文句を言っていたけれど、私は楽ちんで助かったと思った。他の運動部は外を走り回って、大変だもんね。吹奏楽部がなぜかマラソンしているのを、目を丸くして眺めたりしていた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!