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雨が降ったら雨を見せて、虹が見えたら虹を見せて、キレイな夕日が見れたらそれも見せて。
「雪も早く見せたかったな」
すごく楽しそうに言うから毒気を抜かれてしまった。
親ってそんなに子どもにいろいろ見せたいものなんだろうか。
「うん、親なんてのは自己満足だよ! 喜ぶかなーって思ってどこか連れていって、楽しくなさそうだったらがっかりするもの。でも感じ方は人それぞれだからしょうがないよね」
あっけらかんと、”感じ方は人それぞれ”と言われて見直した。
こんなことをつらつらと思い出してしまうのは桜がキレイだからなんだろう。
「おーい! おさむー! こっちこっちー!」
離れた場所から大声で呼ばれ、僕は眉を寄せた。ぶんぶんと手を振る子どもじみた姿に苦笑する。
いつだってそうだ。
「遠くから大声で人の名前を呼ぶなよ。はい、袋」
「おー、助かった!」
「なんでそれだけ立派な弁当用意できるくせにごみ袋は忘れてくるかな」
「弁当と袋は別! ありがとう!」
青いビニールシートの上に広げられた重箱。その周りににこにこしている祖父母と呆れたような顔の妹。そして相変わらずな母。
「お兄ちゃん遅いよ、おなかすいたよー」
「花見じゃないのかよ」
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