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そのままヨシハルと一緒に廊下を歩いているとき、ふと思い出したことがあり、口を開く。
「そういえば、こないだ見つけた絵本にさ、すっごい綺麗な花が載ってたんだ」
「へー、花かあ。ここじゃ無縁の言葉だな」
「んでさ、この薄暗い天井の上にはサクラという、とても美しい花が咲く樹があるらしい。どれほど美しいんだろう。一度でいいから、見てみたいなあ」
「諦めろ。俺達は外の世界には出られない」
ヨシハルの言葉に、俺の願望はあっけなく消え去った。思わず溜息をつく。
そうだ。俺達のいるこの場所はとても閉鎖的な場所で、外部とは誰も連絡を取らないし、ここの人間は外の世界がどうなっているか知らない者がほとんど。たまに見つける本や絵本なんかで外のことを知れるけど、それも本当のことなのかはよく分からない。とにかく、外の世界の情報がここには少なすぎるのだ。
俺がサクラのことを知ったのも、昨日村長達大人が話しているのを偶然耳にしたからだ。確か「上のサクラの樹からのエネルギーが」どうのこうの言っていたが、俺には難しくてよく分からなかった。
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