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______5年後。
首に下がる碧玉掌でを握った。ひんやりとした石の感覚は、あの日から変わらない。
母様。
遂に此処までやってきました。
小さく呟く。
あの時は、この深碧の意味を理解するには余りに幼過ぎた。
けれど、今ならこれの意味も、これを私に預けた意味も分かる。
これは私のものだと言った母様の言葉の意味も。
5年という長い時間が経ったが、一度もあの日を忘れた事はない。
いくぞ!
力の限り叫んだ。
目の前にはただ広いだけの、中身のない王城があった。
私の合図と共に、それに次々と火矢が打ち込まれ、彼方此方から悲鳴が上がる。
隣に立つ相方が、馬で駆けてく。
目で私に待つように合図した彼は、あっという間に見えなくなった。
彼の進んだ方向から、また悲鳴が上がる。
暫くすると彼が戻ってきた。
城門は破れた。王はまだ出てきていないようだ。相手の兵は既に三割は潰している。
静かにそう報告した彼を労う。
圧政を強いてきた王が、何ともまあ情けのないことか。
民の多くが、貴族の多くが私に味方しているというのに、まだ抵抗をするのか。
王太后の言いなりになった結末が、これだというのか。
遣る瀬無くなって、自ら剣を振るう。
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