深碧

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相手の兵へと伝えろ!抵抗しないものの命は奪わんと。 味方になれば、褒賞を与えると。 号令を出せば、1時間後には抵抗するものが元いた兵のうちの4割ほどまでに減っていた。 後で知ったことだが、抵抗をやめこちらの味方になった殆どの兵が、近辺の農民で、無理矢理連れて来られた者達であった。 敗色が濃くなったが抵抗を続ける4割は、一体、何を思って抵抗を続けるのだろう。 王への忠誠心であろうか。 愚王であろうと部下には慕われていたのだろうか。 元々気の弱いが優しいあの人らしい。 彼自身が政治を動かしていたら、もっと違う結末になっただろうに。 王が出てきました! その声でふと我に返る。 我軍の勝利は明らかであった。 これ以上被害を広めるのは、王の思うところではなかったらしい。 手足を縛られた王が、私の前に引き摺られてきた。 久しぶりだな。鈴蘭………いや、真藍と言った方が良いか。 お久しぶりです。兄上様。私のものを返して頂きに参りました。 王が……いや既に王でなくなった男が、私の胸元に掛かる深碧の首飾りを見て、自嘲気味に微笑んだ。 私は何故か泣きそうになった。鈴蘭(女)であった時の自分が、まだ『姫』と呼ばれていた時の自分が、兄と話す事によって出てきてしまったのだろうか。 矢張り、それはそなたのものであったのだな。 父上様の意思です。 ………私は王になどなりたくはなかった。 何も言えなかった。 兄のその気持ちを、痛いほどに知っていたから。 王座など、臆病で虫も殺せないこの人には似合わない。
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