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済まない。母上を止めることが出来なかった。
この責任は、私が負うよ。
兄上様、と喉まで出たかったのを抑える。
今の私は反王派の人間であり、その首領だ。『王』を何度も兄と呼ぶわけにはいかない。
王に情が残っていると思われてはいけない。そう思われたが最後、私を信用してくれる臣下はいなくなる。
連れて行け。
冷たい音が、私の喉から出た。
自分の声と思えないそれに、私は涙を流しそうになる。
兄上様は、これから3日以内には処刑されるだろう。もう、兄弟として話すこともない。
だが、こうなった事に後悔はしていない。
王権を取り戻すことを、後悔などしない。
母の思いを、犠牲を、無駄には出来ない。これまで多くのものを犠牲にしてきたのだ。ここで情に流されるわけにはいかない。
ただ、来世では、
普通の兄弟として生まれたいと、
心の底から願った。
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