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「昔々の話だが、おれはこの学校に通ってた。この木の下で本も読んだ。そのとき、頭を撫でてくれたろう。髪についた花びらを、そっとはらってくれたろう」
学校の怪談で、校庭の桜の下には、あれは死体が埋まっているのだと言うやつが、学級にひとりはいたと思うが、おれはその死体にひそかに憧れていた。地蔵眉が優し気で、鼻筋の通った洗い髪の美人と、いつか話をしようと思っていたのだ。
そうだ、やはりここはおれの故郷なのだ。花も山脈も変わっていないのだ。
「そら、ぼうやに会いに行くがいい」
花びらを一枚拾って息を吹きかける。花びらは風に舞い上がり、雪をかぶった山の上空へ消えて行った。
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