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花吹雪
田舎の学校で、田舎は山の中にある。木造校舎の前には広い校庭があって、向こうには青い山々がいつだってここらの田んぼを見下ろしている。
校庭のぐるりは半分ぐらいは土手になっていて、太い幹の桜が並んで植わっている。それが最近一斉に薄桃色を開いた。
あちらで知り合った友人たちにもいずれ見せてやりたいと思ったが、まあ、そんなことをぼんやり話したこともあったかもしれないが、これが我が懐かしの母校。久しぶりに帰省したら花が咲いたと母が言うので、それじゃあ、と、それで今はぼんやり鉄棒によっかかりながら、ただ本当にぼんやりとだけしている。
汽車に乗る前の晩に「花が咲いているかもしれない」と言ったら、「お前、もう散ったろう」と言われたが、とんでもない。ここらの桜は今からが盛りだ。今年はちょいと早いぐらいだ。
彼らは知るまいが、ここらは冬がまごまごしている間に、待ち草臥れて春が来る。遠く青い山脈は、まだきっちりと白粉を塗っていて、こっちの木々はもう頬紅をたっぷり。梅も、桜も、桃も、杏も、そんなに変わらず花が咲く。
今年も冠雪の山々と、満開の桜とが、実にきれいだ。
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