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彼らの後頭部を眺めながら、わたしは時がくるのを待っていた。参加初日に迫力負けして半年。もうすっかり残りもの担当だ。
小心者なせいか争いごとは苦手で、いまだに5歳下の妹にも勝ったことがない。
自分でも情けないと思っているけれど、それでも自己嫌悪にならずにすんでいるのは、もうひとりお仲間がいるおかげ。
少し離れた場所には、わたしと同じように、人の波がひくのを待っている男子生徒がいた。
伸びかけの髪から見える横顔は、いつでも無表情。スクールサンダルの色が青だから2年の人だ。
(あ、動いた)
その人が視界から消える。ということは、ようやくわたしの番。
さきを譲るのは、先輩をたてるためでもあるし、そのほうが気が楽っていうのもあるし、それに、
「今日は4種類あるよ。どれにする?」
いちばん最後に並んだわたしに、購買のおばちゃんがにっこり笑う。
毎回残りものを買っていくのに同情してくれているせいだろうけど、他の人たちよりも優しく話しかけてくれるのが嬉しい。
「ありがとね!」
パンを受け取るとき、おばちゃんはそう言って、いつもわたしの手の甲をポンと叩く。ちゃんとわかってるよ、 と言われてるみたいで心強くなる。
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