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午後いちの授業は古文。担当の古泉先生は、うちのクラスの担任でもある。
20代後半で、イケメンってほどでもないけど気さくで優しくて融通をきかせてくれるから、けっこう生徒に人気がある。
昼食後の眠気をさそう時間帯。クラスメイトが教科書を朗読している間、ぼんやり窓のそとに目をやる。
はけで掃いたような白いすじが何本も流れる、秋晴れの空。グラウンドでは男子のみなさんがサッカーをしていた。
学年色が青の体操服。ということはもしかして、とあちこち視線を動かすと、
(いた……!)
あの先輩が購買のときみたいに、ボールをとりあう人たちと距離をおいて、のろのろついていくのを見つけた。
そのまま目で追っていると、味方チームのひとりが先輩に近寄り、なにかを耳打ちした。
ちゃんとやれって注意でもされたのかと思っていたら、先輩がさっと走りだし、相手チームからボールを奪ってべつの人にパスをだした。
みごとに点が決まる。さっきのはその指示だったらしく、話しかけていた人が労をねぎらうように先輩の背中を叩いている。
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