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つぎの日の昼休みも、わたしは購買で嵐がすぎるのを待っていた。
ちらり、横目で先輩を見る。きのうの体育で活躍したときも、こんなふうに平然としていたから、もともと感情をあらわにしないタイプなんだろう。
って、むこうはそれを見られていたのも、こうしてこっそり見られているのも知らないのを思ったら、なんだかちょっぴり、うしろめたい。
目の前の人垣が、だんだんまばらになっていく。先輩が動いたのをみはからって、そのうしろに並ぶ。
と、今までにない困り顔をした購買のおばちゃんが、先輩とわたしを交互に見てため息をついた。
「どうしようかねぇ。なんでか今日は盛況でね、あと1個しかないんだよ」
おばちゃんが手にしたのは『鬼甘』と呼ばれる、見ためは普通のクリームパンだけれど、ありえないほど甘いと噂のパン。
毎日1個だけ入荷する。そして必ず売れ残る。それでも、どういうつもりか作られ続けている謎めいた品だ。
パン屋さんの遊び心? だとしても買う側としては、普通においしく食べられるものを作ってほしい。こんな場合はとくに。
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