当たりつきレシート

　俺のバイト先は個人経営のコンビニで、店のサービスで、レシートの裏に当たりはずれが書かれている。
　当たりのレシートは、裏面に十円から百円までの金額が印刷されていて、次回以降店で金券として使うことができる。
　値段的にはたいしたものではないが、ちょっと嬉しいサービスとして客の間では好評だった。
　ただ、金の代わりになるから悪いことを考える奴もいて、はずれレシートの裏面に当たり金額をコピーした物を使おうとする、なんてこともちょくちょくあった。
　今も、いかにもインチキレシートを持ち込んだ客が来ている。
　レジに大量の当たりレシートを持ち込み、金額分の煙草にしてくれと訴える。
　レシート内容を確認してみたが、そこは拾っただろうレシートを、うまく日付を揃えたりしているようで、あからさまに妙でもインチキと断定できる部分がない。だから、こういったクーポン類を使用刷る際の暗黙のルールで、一度に一枚しか使えないと言っても聞かず、煙草をよこせと喚き続ける。
　それでも俺が、一度に一枚しか無理だ突っばねたら、男は大きく舌打ちをし、持ち込んだレシートを鞄に詰めて荒々しく店を出ていった。
　その数十秒後、外の大通りから何かがぶつかる衝撃音が響いてきた。
　仕事中だということも忘れて外に飛び出すと、道の真ん中にさっきの男が倒れていた。でも、周りには人だかりこそでき始めているが、自動車もバイクも自転車の影すらない。
　それでも確かに男は道の真ん中に引っくり返っていて、その隣に落ちた鞄の口から、大量のレシートが溢れ出し、風に乗ってどこかへ消えていった。
　ええっと、これは…不正の当たりレシートを使おうとした男にばちが大当たり。そういう解釈でいいのかな。

当たりつきレシート…完