1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
宿り木
うららかな春の日差しが、まだ肌寒い朝の神社に降り注いでいた。
木々も新緑に染まり、今が春であることを実感させてくれる。
ようやく咲き始めた蕾ばかりの桜の木によりかかり、僕は待っていた。
「おまたせ」
後ろから声がかかり僕は振り返る。そこには懐かしい笑顔が輝いていた。
「お帰り、カンナ」
僕はどこか幼さの残るカンナを引き寄せると、うれしくなり抱きしめた。
「いたいよトシくん、ぎゅーつよすぎ」
文句を言うカンナ。負けじと細い腕で僕の体を抱きしめ返してくる。
「会いたかった」
華奢なカンナの体は力いっぱい抱きしめたら折れてしまいそうで、それでもかまわず僕は抱きしめた。
「ねぇねぇ、おなかすいた」
そんな僕の気持などお構いなしに、カンナは僕を見上げて無邪気な笑顔を見せる。
「いきなりそれ?!」
「うん。いこ」
カンナは僕の腕を振りほどくと、僕を引っ張って歩き出した。でも頑張って引っ張っている割には全然進まず、時折よろけては踏みとどまっている。
しょうがなく僕もカンナについていく。
そんなカンナを見るのがうれしくて僕は一人ニヤけていた。
しばらく歩いた後、カンナはきょろきょろあたりを見回し小首をかしげた。
「マックない」
最初のコメントを投稿しよう!