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「…ってごめんね!こんな遅くまで、しかもこんな重い話…。迷惑だよね。」
心咲はゆっくり立ち上がり、いつもの笑顔を浮かべた。
「帰るね!ありがとう話したら少しスッキリした。」
俺は今更に気付く。俺が可愛いと感じていた今までの心咲の笑顔、それは総て仮面だったことに。
踵を返し歩こうとする心咲にはっとし、声が出ていた。
「ってちょ、待って。」
彼女は止まり振り返る。なんだろう?という表情の中に何故か、強ばりが見えた気がした。
ーなんで俺、止めたんだ?
自分でも分からず少しの沈黙が流れる。ふと時計に目が止まり時間を見た。午前3時。
「…泊まるか…?」
俺でも問題があると、言った途端認識した言葉が口から出ていた。彼女からの視線が一気に訝しげになる。
「あぁ!いやっ…!変な意味じゃないしあと…」
俺は言い訳しながら続ける。
「…全然その話迷惑じゃねぇよ。本気で。」
俺の本心。いやむしろ俺はこの事が伝えたかったんだろう。
きょとんとする彼女。そしてそのあと、彼女はくしゃっと笑った。いつもの笑顔ではなく、少し笑窪のある不器用な笑顔。
「…ありがとう。お言葉に甘えちゃおうかな。」
その笑顔は不器用だけれど、今までの笑顔より何倍も 、いや何十倍も可愛く 、愛らしかった。
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