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「……え?」
「あの……あのね。あ、あたし、誠といると楽しい。誠はあたしをいつも元気にしてくれるから、誠といると、胸がラクになれる。あ、あのね……だけど……でも……あたし……あたしの心は……どんなにがんばってもかわんないの……」
誠の口から、笑みが消えた。
「……和泉……それって……」
あたしはこくっと、うなずいた。
「あたし、好きな人がいるの。どうしても、その人のことがわすれられないの。ううん。わすれたくないんだ。一生、この想いを持ちつづけていたいって思う。だから、こんな気持ちのままで誠といたら、誠をどんどん傷つける。ごめんなさい。あたしと別れてください」
あたし、ヒドイ……。
じゃあ、なんで、誠とつきあったの?
好きな人がいるのに。本気であたしのことを想ってくれる誠を、どうして、その気にさせたの?
そろっと顔をあげると、誠は自分の首の後ろをなでて、うつむいていた。
「……そっか。うん。だろ~なとは、思ってたよ。記憶がもどったら、和泉は真っ先に、オレにそう言うだろなって」
「……誠……?」
足元を見ていた誠の目が、チラッとあたしの顔を見る。力のない目。だけど、少しほほえんでいる。
「和泉に話すの、まよってたんだけどさ……。オレ、葉児から、ぜんぶきいちゃったんだよね」
……え?
目の前が真っ白になった。
「えっと? ……ぜんぶって……?」
「だから……ぜんぶ」
ぜんぶ……?
ぜんぶ……って……。
「……よ、妖精のこととか……?」
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