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「そう。妖精のこととか、葉児が妖精の薬をつくってることとか。悪い妖精が出てきたこととか。ぜんぶ」 「えええええええ~っ!? 」  あ、ありえないっ!!  だって、あのヨウちゃんがっ!?  誠に話したのっ!?  しかも、ぜんぶっ!! 「そ、それでっ!?  ま、誠はっ!?  信じたの、その話っ!? 」 「……う~ん」  誠はまた、眉をひそめて、首後ろをなでた。 「オレには正直、映画とか本の世界の話をきいてるみたいで……。あんまり、実感は……」 「だ、だよねっ!!  ふつうはそうだよねっ!」 「でも。こうやって、記憶のもどった和泉を見ちゃったらさ。あ。葉児がもどしたんだなって、思うわけじゃん。それに……オレ……覚えてるんだよね……。和泉の背中に羽があったこと……」 「……え?」  あたしはごくんとつばを飲み込んだ。 「幻だと思ってたよ? オレ、あのときは寝ぼけてて、夢と現実がごっちゃになってたんだって。じゃなけりゃ、和泉の背中にアゲハチョウの羽がはえてるわけないって。だけど、葉児の話をきいてさ。『ああ、あのときの和泉は、そういうわけだったんだ』って……」  まだ小学六年生だった秋。  浅山の砲弾倉庫跡で、あたしは羽を出して、羽のりんぷんをつかって、誠の傷を癒した……。 「ね、和泉。お願い! オレにもう一度、羽見せてっ!」  誠が、パンっと柏手をうった。 「え、ええっ!?  だ、ダメっ!」 「……なんで? だいじょうぶだよ。オレのほかに、だれも見てる人いないよ?」  きょろきょろと廊下を見まわしてみる。たしかに、みんなはもう、家に帰った後で、教室にのこっている生徒はいない。 「でも、ダメっ!!  それでもダメなのっ!!  あたし、ヨウちゃんと約束したんだからっ!」
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