47人が本棚に入れています
本棚に追加
「そう。妖精のこととか、葉児が妖精の薬をつくってることとか。悪い妖精が出てきたこととか。ぜんぶ」
「えええええええ~っ!? 」
あ、ありえないっ!!
だって、あのヨウちゃんがっ!?
誠に話したのっ!?
しかも、ぜんぶっ!!
「そ、それでっ!? ま、誠はっ!? 信じたの、その話っ!? 」
「……う~ん」
誠はまた、眉をひそめて、首後ろをなでた。
「オレには正直、映画とか本の世界の話をきいてるみたいで……。あんまり、実感は……」
「だ、だよねっ!! ふつうはそうだよねっ!」
「でも。こうやって、記憶のもどった和泉を見ちゃったらさ。あ。葉児がもどしたんだなって、思うわけじゃん。それに……オレ……覚えてるんだよね……。和泉の背中に羽があったこと……」
「……え?」
あたしはごくんとつばを飲み込んだ。
「幻だと思ってたよ? オレ、あのときは寝ぼけてて、夢と現実がごっちゃになってたんだって。じゃなけりゃ、和泉の背中にアゲハチョウの羽がはえてるわけないって。だけど、葉児の話をきいてさ。『ああ、あのときの和泉は、そういうわけだったんだ』って……」
まだ小学六年生だった秋。
浅山の砲弾倉庫跡で、あたしは羽を出して、羽のりんぷんをつかって、誠の傷を癒した……。
「ね、和泉。お願い! オレにもう一度、羽見せてっ!」
誠が、パンっと柏手をうった。
「え、ええっ!? だ、ダメっ!」
「……なんで? だいじょうぶだよ。オレのほかに、だれも見てる人いないよ?」
きょろきょろと廊下を見まわしてみる。たしかに、みんなはもう、家に帰った後で、教室にのこっている生徒はいない。
「でも、ダメっ!! それでもダメなのっ!! あたし、ヨウちゃんと約束したんだからっ!」
最初のコメントを投稿しよう!