2/8
前へ
/143ページ
次へ
 手芸部の部室の窓の外。  夏休みの空には、きょうも入道雲があがってる。校庭の桜並木では、セミがジージーとうるっさい。  いつも校庭を支配しているサッカー部員は、県大会の遠征中で。だから、校庭がやけに広々として、照り返しが強く感じる。  誠……今ごろ試合かな……?  あたしは、作業台の前で、ため息をついた。 「一年なのに、補欠で入れてもらえた!」ってよろこんでたっけ。  夏休みなのに、誠としょっちゅう顔をあわせているから、こんなふうにガラガラの校庭は、空気の抜けたうきぶくろみたい。  ヨウちゃんも、どうしてるんだろ……? 「浅山にハグを呼び込む方法を考えてみる」って言ってたけど。 「綾ちゃん、ぐあいでも悪いの?」  顔をあげると、作業台の横に、有香ちゃんが立っていた。  パッチワークにする布を十枚以上広げて、ぼーっとしていたから。有香ちゃんに心配されちゃったんだ。 「あ、ううん。なんでもない。ただ『暑いな』って思ってただけ」  あわてて頭を起こしたら、雲の上を歩いているみたいに、頭の中がふわ~っとした。 「あ、あれ? やっぱ、なんかおかしいかも? 目の間がきゅ~ってなって、くらくら~ってする~」
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加