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顔をあげると、誠の目に涙が浮かんでいた。
「ごめんね。和泉の日記……ちょっと読んじゃった。――和泉はさ。一方的でもいいから、葉児のことを見続けていきたいんだよね。羽が必要なときには、すぐに行動にうつせるようにって。そういうことなんでしょ」
「……うん」
わすれてた……。
あたし……記憶を失ってたとき、ヨウちゃんにも日記を見せたんだ。
ってことは、ヨウちゃんにもあたしの気持ち……バレてる……。
「は~。そりゃあ、オレが、どんなにがんばったって、かなわないわけだよ~」
誠は、へなっと肩を丸めた。
「誠。ふりまわしちゃって……本当にごめんなさい……」
「え~? う~ん。ど~しよっかな~。やっぱ、許せないかな~」
「……え?」
「和泉、お願いっ! 一瞬でいいから、羽見せて。じゃないとオレ、どうしても心が決まんないんだっ!」
……誠。
おがんでくる誠の目、まるで子犬みたい。
「オレ、ちゃんと、和泉たちのことを信じたいんだよっ!! 」
「……わかった。一瞬だけなら」
あたしは、全身鏡から背中をはなした。
頭をぼうっとさせて、肩の力を抜いてみる。
両肩の後ろ、肩甲骨のあたりが、ぽうっと銀色に光った。
銀色の光の粉が、チラチラと肩甲骨からあらわれて、背中をおおっていく。
まるで、満天の星空。
それか、遊園地のイルミネーション。
銀色のりんぷんが、あたしの背中に、大きなアゲハチョウの羽の輪郭をつくっていく。
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