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スクールバッグを肩にかけて、有香ちゃんと昇降口におりると、くつだなに、背中でもたれていたヨウちゃんが顔をあげた。
「綾? 部活終わった?」
ヨウちゃんは手ぶら。いちおう、制服は着ているけど、カバンもなにも持ってない。
「終わった、終わった! ね、ヨウちゃんは、学校になんの用? もしかして、あたしのお迎え?」
「アホか」って、つきはなされるかと思ったのに。ヨウちゃん、「そ」って、にっこり。
わ……。キュ~ン。
「綾。これから浅山に行けるか? ちょっとみんなに話したいことができた」
「う、うん! でも誠は? きょうはサッカーの試合でいないよ」
「ああ……あいつ、試合か……」
ヨウちゃんが「う~ん」と腕を組む。
「中条。まさかこれから、綾ちゃんを浅山につれてくつもりなの?」
ふり返ると、有香ちゃんが自分のくつだなから、ローファーをとりだしていた。
黒縁メガネのレンズが、ギランと冷たく光ってる。
「たしかおとといも、土曜も行ったんだよね? かんたんに『浅山に行く』なんて言うけどさ。山歩きでしょ。こんなに暑い中。綾ちゃんはあんたとちがって、体力がないの。あんまり、つかれさせないでやってくれます?」
「ほぇえ? 有香ちゃんっ !? あたしなら、だいじょうぶだよっ! さっきは、ちょっとクラっとしただけ!」
「『ちょっと』じゃないでしょ、綾ちゃん。気づこうよ。めまいの原因、これだよ。つかれてんの」
「え? そ、そうなのかな?」
「めまい……か」
ヨウちゃんが眉をひそめた。
「わかった。浅山行くのは、また今度にしよう」
「いいの?」
「べつに急ぐことじゃない。誠もいないしな。綾、うちまで送ってくよ」
わ~いっ めまい、ばんざい!
送ってもらえるなんて、ラブラブカップルだぁっ!
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