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「わたしはね。ずっと気になっていたことがあるんだよ。妖精の体の成長は、精神年齢とイコールだということは、きみも知っているよね。 だが、おとなの妖精は存在しない。それは、どうしてだと思う? 妖精は個体によって、成長の止まる時期がバラバラなんだが。なぜだか、おとなになる前に成長がとまってしまうんだ。 きみたちがヒメと呼んでいる、あの子が限度だろうね。だいたい中学一年か、二年か。それ以上に育った妖精を、わたしは見たことがないんだよ」 「……それが……綾となにか?」  木陰が、鵤さんの足元にまだらもようをつくる。 チチチチチ……。  上空でかすかに妖精の声がした気がして、オレは顔をあげた。  オークの葉にまぎれて、丸いヤドリギの塊が見え隠れしている。冬になって、オークの葉が落ちると、ボールのような姿をあらわすそのヤドリギは、今は、葉にまぎれていて、ともすると、存在をわすれてしまいそうになる。 「……綾ちゃんは、おとなになっていくよね。おとなになるにつれて、綾ちゃんの精神年齢もあがっていく。だけど、妖精はおとなになれない。綾ちゃんの中で、妖精の体と、人間の体の間にズレが生じていく。そのズレが、綾ちゃんの負担になりはじめているのかもしれない……」 「……そんな……」  地面がゆれた気がした。 「……じゃあ綾は……?」 「このままだと……いずれ、人間の綾ちゃんの体は、妖精の体に破壊される」
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