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わっと、目の中に映像がとびこんできた。
オークの木の根元に、黒いローブをまとった者が立っている。
ローブのすそは、足がすべて隠れるほどに長い。そで口は広がっていて、指先まですべて隠している。鼻まで深くかぶったフード。下の顔は影になって見えない。
……影……?
人の顔などない。
黒いモヤ。目もなく鼻もなく口もない。ただの黒いモヤのあつまり。
「は……ハグっ!? 」
腰の力が抜けて、尻もちをついた。
見あげたオークの葉の中に、ヤドリギの葉が見え隠れしている。
「う、うわぁあああっ!! 」
カレンデュラの花びらをかざして、オレはさけんだ。
映像が見える。
木の枝にからみつく、無数のヤドリギ。
その球状をしたひとつひとつの中に、妖精たちが足を丸め、縮こまっている。
内部が虹色に光るのは、チコリの魔力が宿っているあかし。
「……閉じ込める力」
ヤドリギの内側には、ゴースの針がつき立っていて、中で妖精が少しでも身動きすれば、その羽を刺すようになっている。
「こ、こ、こ、これをっ!? ……は、は、ハグが……っ!? 」
ひゅっと、目の前をするどい風がかすめた。
かざしていた花びらが、風に飛ばされる。
映像がかき消える。
右ほおにピリッと痛みを感じて、指をあてると、中指の先に赤い血がついた。
「……え?」
「葉児君、逃げろっ!」
鵤さんのするどい声。
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