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……え?
作業着のズボンが。ベルトを巻いた腰が。胸が。あごひげが。ほおが。頭が。鵤さんの体は、透きとおり、目の前から消えた。
ポトと、足元になにかが落ちる音がした。
音だけだった。
木の根のせりだした土の上には、なにも落ちていない。
き……消えた……。
鵤さんが……――。
目の前で、黒いローブのすそがひるがえった。
「うわっ!? 」
瞬間的に目を閉じて。すぐに開けたとき。
黒いローブをまとった老婆の姿もかき消えていた。
青空の下。濃い影を落とす外人墓地。
耳鳴りのようにセミが鳴いている。
――「ナイショの妖精さん 7」 完――
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